一般社団法人 日本経済団体連合会(以下、経団連と表記)の提言『Digital Transformation (DX) ~価値の協創で未来をひらく~』 では、図表 1.3.12に示すように次の事業刷新戦略が挙げられている。
- 既存事業においてデジタルを活用してプロセス等を改革(以下、既存事業のプロセス改革)
- 既存アセットを活用した新規領域への展開(以下、既存の製品やサービスの顧客領域拡大)
- コア領域において新たな軸で事業展開(以下、技術変革で製品やサービスの領域拡大)
- 0→1の新規事業開発、全く新たな成長の基軸(以下、新規事業領域に進出)
図表 1.3.12 DXによる事業刷新の戦略
「DXに取り組み中、または取り組み予定の企業」を対象に、これらの事業刷新戦略のいずれを目指しているのか調査した結果を昨年度の調査結果と比較したものを図表 1.3.13に示す。
会員顧客企業では、「既存事業のプロセス改革」を目指す企業が70%から83%へ増加し、「技術変革で製品やサービスの領域拡大」や「新規事業領域に進出」を目指す企業が、それぞれ50%から42%、29%から18%に減少している。
一般企業でも、「既存事業のプロセス改革」を目指す企業が中規模企業で41%から55%へ、小規模企業で4%から49%へと増加している。反対に、「既存の製品やサービスの顧客領域拡大」を目指す企業が、中規模企業で37%から28%へ、小規模企業で44%から23%へと減少している。
前述の経団連の提言にある『DXによる事業刷新戦略』では、「既存事業の改革のみではDXとは言えない。特に重要なのは、新規事業と派生事業である。」としているが、企業の現場は反対の方向に動いているようだ。企業の危機意識の低さが大きな要因と思われるが、『DXレポート』が2025年の崖を強調しすぎ、『DXレポート2』 ほど「デジタル社会に対面する企業の危機」を説明しきれていなかったのも一因であろう。
図表 1.3.13 DXの対象領域の経年変化(DXに取り組み中、または取り組み予定の企業)
一方、今年度の調査結果を、「DXに取り組み中の企業」と「DXに取り組み予定の企業」別に分け、既存事業と派生事業に分けて集計した結果が図表 1.3.14である。これから分かるように、どの企業群でもわずかではあるが、「既存事業での取り組み」が減少し、「派生事業での取り組み」が増加しており、今後の進展が期待できそうである。
図表 1.3.14 DXの対象領域の違い(DXに取り組み中、または取り組み予定の企業)